株式会社SCOUTERのCOOが人事を尽くして考えた

渋谷で「SCOUTER」を運営する株式会社SCOUTERのCOOがスタートアップ・組織について書いているブログです。

スタートアップで必ず「期待通りにいかない」3つの言葉

組織は「言葉」に裏切られる

組織というのは集団活動であり、集団において「言葉」というのは非常に重要な要素となっております。組織や経営というのは見方によっては「言葉」で構成されているとも理解でき、どのような言葉が使われてるか、社内で飛び交っているかは事業の成否を決める重要ファクターだと思います。そして「言葉」には期待と現実があります。もちろん、それぞれの場面によって言葉が持つ意味は大きく変動しますが、スタートアップにおいてよく使われる言葉の中には残念ながら期待と現実の乖離が激しい言葉があるのです。そのようなギャップの大きい言葉が社内・部下からよく出てきた時は、組織の危険信号として捉えるべき状態かもしれません。

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期待通りにいかない言葉ランキング

1位:体制を変更します

2位:戦略変えます

3位:新機能を作ります

これらの言葉は確かに大きな変化を意味します。しかし、だからこそこれらの言葉に人は甘えます。あまり深く考えずに、言葉の力に引っ張られ、効果が出ると"期待"し、現実に"失望"するのです。

1位:「体制を変更します」

去年のSCOUTER社で一番良く聞いた言葉がこれです。体制が悪かった、役割分担を変えれば上手くいくという意見で、確かに大きな変化のように感じます。ベストな体制に変えたのだから何か改善されるだろうと上司も思うことでしょう。ただ、何も変わらない可能性の方が高いです。なぜならば、本質的にやることは変わってないからです。いくつかのオペレーションをやる人が変わったり、肩書きの入れ替えっこをしたところで、何も数字は改善されません。そして体制の変更コストは大抵高くつきます。何回にも渡る体制変更はメンバーの習熟を妨げたり、深く考える機会を奪い取ってしまうため、成長速度が遅くなります。この言葉を聞いた場合、本当にそれが意味あることなのか、一度立ち止まって問いかけたほうが良いでしょう。それは効果的なアイディアが浮かんでないからやる、騙し騙しの策ではないのかと。

2位:「戦略変えます」

この言葉もよく聞きますね。戦略変えるんで大丈夫ですと。これ、大丈夫じゃありません。なぜなら以下の二つを抱えている可能性が高いからです。

  • そもそも戦略は安易に変えるものではない
  • ここで言ってる「戦略」は「戦術」程度のものでしかない

「戦略」という言葉が人にもたらす期待はものすごいものがあります。ハイパーインフレ状態です。戦略を変えたら上手くいく。上手くいっていない原因は戦略が悪いから。これが思考停止状態に陥った人の基本フレームになります。これが本当に危険。スタートアップにおけるあってはいけない症状がどんどん生まれていきます。他責思考であったり、やり切らずに次へ行ってしまう等。なので、基本メンバーには「戦略」という言葉は使わせない方が良いと思います。戦略は事業戦略として経営が定めることであり、経営が変更するものである。故にメンバーは既存戦略の範囲内で思考することに務める。これを基本にすべきだと思います。すると、メンバーの思考は常に具体的なものに変わり、一つ一つの施策の精度が圧倒的に高まります。「戦略」という逃げ場を与えないことがメンバーを思考に走らせるのです。

3位:「新機能を作ります」

人間というのはどうしても「新しさ」に価値を感じるものです。新しいと期待が上がる。ただ新しいというだけなのに。根本的に新しさには価値はありません。しかし、既存の機能の改善と新機能作成だと、どうしても新機能の方が効果が出やすいと錯覚してしまうのです。そして、新機能を作るから数字が上がると考える。当然効果が出る新機能もあると思いますが、そんなに成功確度は高くないでしょう。そもそも機能自体が受け入れられるかからスタートするわけなので。にも関わらず新機能を作ったから必ず数値が改善すると見積もってる場合、大きな誤算が大量に発生します。新機能というのはあくまでも価値の拡張であり、それによってKPIが改善される可能性が高まるとは想定しない方が良いのではないでしょうか?既存の改善で目標達成できるプランニングをした上で、新機能を考えるくらいが目標管理という側面では圧倒的に適切です。

地道な改善こそ近道

以上、スタートアップにおける期待通りにいかない言葉ランキングでした。抽象的な"言葉自体の期待値が高すぎる言葉"をあまり信用しない方が良いというのが結論です。スタートアップであろうが、数字を上げるためには地道な改善を繰り返すしかありません。この改善の工夫度合いがサービスレベルを決め、顧客への価値を決め、それが売上になって返ってきます。たった一つの何かで全てが改善されることなんて絶対にあり得いのです。

経営者は「言葉」の期待値調整をするべき

「言葉」には全てに期待値がついていると思います。そして問題はその期待値が人によって違うということです。この期待値の違いが、あらゆる認識の齟齬を生んでいきます。個人的にはコントロールするべきは「言葉自体」の期待値であり、「実態」の期待値調整は困難だと考えています。例えば戦略という言葉の実態を経営者と同じ程度、メンバーに理解してもらうのは非常に困難です。なぜならば、戦略を自分で決めて実行する機会が少ないから。つまり体験できないからです。同じ体験ができていない中で「実態」の認識を合わせることは驚くほど難しいです。なので、「言葉」の期待値を調整するべきなのです。「戦略」という言葉はどのくらいの期待値を取るべきなのかを決めてしまう。「戦略」という言葉自体に期待値を紐づけてしまうのです。そうすれば、大きくずれることはなくなるでしょう。経営者と同じ期待値を持っていれば、実現したいことに対して十分になりそうか、不足しそうかが検討つきやすくなります。故に「同じ言葉」を「同じ意味」・「同じ期待値」で使える組織は圧倒的に全ての物事のスピード・精度が高くなるのだと思います。