これは感動の体験記ではありません
GWにファスティング(断食)に行ってきました。元々興味があり、長期の休みが取れたら行きたいと思っており、ちょうど良かったので。今回はファスティングを体験した自分の思考をまとめるとともに、ファスティングというものをCOOの観点から考えてみたいと思います。そのため、"感動の体験記"が記載されているわけではありません。ファスティングによる劇的な効果が書いてあるわけでも、明確な身体の変化が書いているわけでも、ファスティングを絶対にやるべき理由が書いてあるわけでもありません。ファスティングがどのように行われるのか詳細が書いてあるわけでもありません。あくまでも個人的なファスティングの体験の概要とファスティングという体験を通したCOO、経営者としての思考の変化を書いているだけであります。
ファスティングの目的
ファスティングという活動は身体的に疲れやすい自分にとっては非常に興味をそそる活動でした。そこで今回の主な目的は以下でした。
- 蓄積した身体疲労の回復
- カフェインの遮断による脳の活動トリガーのリセット
- 外部情報の遮断による思考のリセット
- 自然との触れ合いによる精神的なエネルギーの充填
- ファスティングに対する自分の理解を深める
- 大切な人との深いコミュニケーション(一番の目的でしたが今回は省略します)
大枠としてはあらゆるものを遮断することで、自己の体内をリセットしたいということが主目的で、特に「カフェイン」と「液晶画面」の遮断で身体に変化が起きるかを学びたいという想いが強かったです。
ファスティング概要
今回は初めてのファスティングということもあり、一番ライトに行える2泊3日のプランを選択しました。また、ファスティングというと寺で修行みたいなイメージが強いみたいですが、今回はヘルスリゾートと呼ばれる宿泊施設を活用しました。自然に囲まれた素敵なホテルで、プールやヨガや庭での散歩をしながらのファスティングなので非常に快適に過ごすことができます。
- 期間:2泊3日
- 摂取可能食材:指定のドリンクと水/お茶のみ
- 場所:天馬夢
こんな緑道があったり
大きな池があったり
馬と触れ合えたりできます
いつの間にか終わってたファスティング
今回の体験を一言で表現するとすれば「えっ、もう終わり??」って感じでした。丸二日以上飲み物以外何も摂取しないわけで、体験前はめちゃめちゃ色んなことを想像していたのですが、特に何も起きませんでした(笑) 確かに常に胃は空っぽなんですが、異常な食欲が湧くとか、何か食べたくてしょうがないという感覚は一切なかったんです。おそらく指定のドリンクによって血糖値が安定していたからだと思います。ということで、ファスティング中のことについて書くことは何もありません。
と、思ったら帰り道が一番辛かった
盲点でした。施設を後にし、家まで帰るまでの帰り道。この間が食欲のピークでした。特に上野駅は厄介です。駅の中にあらゆる食材が陳列されています。これを見た瞬間に食欲がうわーっと出てくるんです。その時、理解しました。施設には食材がどこにもないんです。見えないんです。視界に入らない。これも食欲が強くならなかった要因だったのだと。人間とは目の前にあると、どうしてもそれに対する欲が強まるのだと。食材が見えた瞬間に身体が反応するのです。人間とはこれほどまでに「自己」ではなく「環境」に依存するものなのかと改めて考えさせられました。
ファスティング体験まとめ
現状のファスティングに対する理解と身体に起きた変化をまとめると以下のようになります。
- 身体の変化
- 体重は0.7kg減
- カフェインなしでも脳の活動を感じるようになる
- 目の疲労がなくなり、慢性的な疲労が弱まる
- 寝起きが少し楽になる
- 集中して活動できる時間が長くなる
- 食欲について
- 血糖値が安定しているとそこまで強い食欲は湧かない
- 少量の食事でお腹がいっぱいになるようになる
- ファスティング中よりも帰り道が辛い
- ファスティングに対する理解
COOがファスティングをして考えたこと
今回ファスティングを通して感じたことが一つあります。実は今回のこのファスティングに一人5万円払ったんです。消費者というよりは経営者として衝撃を受けました。2泊で5万円なので1泊で2.5万円。部屋での値段ではなく、一人あたりなので参加人数が増えても単価が下がるわけではありません。食事は出ません。接客が一流なわけでもありません。場所は僻地です。このお金があれば一流ホテルに泊まることも可能なわけです。にも関わらず、消費者としての自分は何も気にせず申込みをしたし、同日は満室でした。「何も提供しないこと」が価値になっているということに対して、経営者は真剣に考えないといけないなと感じるわけです。明らかに時代の空気が変わっている。あえて何もない方を選択する消費者。そして何もない時間を"良い"時間だと感じる消費者。一体我々の中に何が起きているのか。一体我々は何を求めているのか。何のために人はサービスを提供し、わざわざ仕事をしているのか。経営では"付加価値"という言葉をよく使います。価値を加えることが企業の役割であると。そして、これまでサービスや機能を"加える"ことで価値を加えていた。でも、ファスティングという体験はサービスや機能を減らすことで価値を加えることに成功した。いや、もしかしたら価値を"加えた"という表現は間違っているのかもしれない。今回のファスティングに価値を見出したのは紛れもなく自分自身であり、自分が勝手に解釈して価値を感じ取った。そこに付加価値があったわけではなく、消費者である自分が勝手に価値を発見したという表現の方が正しい。ファスティングという体験には余白がたくさんある。ファスティング中に何をするのか自分次第であり、何を考えるのか自分次第であり、ファスティングという活動をどう解釈するのかも自分次第。もしかしたら、そういう余白が消費者を冒険へと導き、自分で価値を見出すきっかけを作っているのかもしれない。決してファスティングの価値を誰かに説かれても、僕はファスティングに価値を見出さなかっただろう。自分で考え、自分で試し、自分なりのファスティングの位置付けを見出したからこそ、ファスティングに価値が生まれ、それをサポートしてくれる施設/サービスにはお金を払う。それが今回の消費の正しい理解であり、このような消費の形こそこれからの時代のスタンダードになってくるかもしれない。新しい消費のあり方、新しい付加価値の付け方について改めて考えさせられる体験でした。
皆さんもぜひ"余白"を楽しむファスティング体験を。