株式会社SCOUTERのCOOが人事を尽くして考えた

渋谷で「SCOUTER」を運営する株式会社SCOUTERのCOOがスタートアップ・組織について書いているブログです。

2016年スタートアップCOOが参考にした珠玉の7冊

2016年を振り返って

早いことにもう年末になってしまいました。今年は僕にとって大きな変化がある一年で本当にあっという間でした。振り返ると1月から

  • VCから調達を受ける

  • SCOUTERのローンチ

  • 会社名の変更

  • オフィスの移転

  • ピッチで決勝に

  • メンバーが4人から約20人に

と、とてつもないスピードで次から次へと物事が変化し、これまで三年「経営」というものをやってきましたが、これがスタートアップなんだなと実感した一年でした。 この気が狂ってしまうようなスピードに文句一つ言わずついてきてくれ、株式会社SCOUTERのビジョンを形にしてくれているメンバーには感謝しかありません。

また、この一年で感じたことは、常に自分がこのスピードについていくためには、並大抵の努力では足りないなということです。慢心した時点で死ぬ。そう気付くことができたことはこの一年、少し成長できたことかなと思います。

年末年始と読書

僕は年末年始が大好きなんですが、理由としては貪るように読書に集中できるからです。基本的に年末年始は読書をするか寝るかの生活を送っております。僕は読書が基本的に好きなので、読書という行為それ自体が目的になることもあるのですが、やはり読書は自分の成長を加速させてくれる最も有効な手段だとも思っております。読書を通して引き出しを増やしているイメージですかね。すぐに役に立つことは滅多にありませんが、様々な課題に直面した時に考える視点や、解決策のヒントを自分の頭の中のストックから探し出すことができるのは、一重に読書のおかげだなと思っております。スタートアップは課題の連続なので、それに立ち向かうだけの何か武器が必要で、僕にとってそれが読書だったのかもしれません。そこで、2016年急激な成長を迎えたスタートアップをなんとか経営することができた我々に大きなヒントを与えてくれた本を7冊、最後にご紹介できたらと思います。特になんでもやらなければいけないCOO、No.2のような方に参考になるものをピックアップいたしました。

スタートアップCOOに役立つ7冊

戦略論

『ストーリーとしての競争戦略』

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まずは、戦略論からこの一冊。戦略論って非常にアカデミックな本が多く、もちろん参考になる部分はあるんですが、実務に落とし込むのってすごく難しいですよね。特にスタートアップだと、リソースもなければ、そもそも市場がないような世界で戦っているので、前提条件が違うことが多々。それに比べて、この本はとにかく実務にそのまま応用できる内容です。弊社の戦略もここで紹介されている「戦略ストーリー」で描いています。メンバーにとってもわかりやすいですし、日々のオペレーションまでイメージすることができる戦略を描くことができる。そして、一つ一つの選択や戦術の因果関係を明示することができるので、なぜやるのかに対して明確に答えを提示することができます。スタートアップにとっての柔軟で、にも関わらず強固で、他者から真似されない戦略を描くなら、僕はこの「戦略ストーリー」をお勧めします。

マーケティング

『ポジショニング戦略』

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正直、マーケティングについては僕はよくわかっていません。領域が深すぎて、専門家じゃないと正しい判断ができないことが多すぎると感じてますし、そもそもマーケティングという言葉の定義が広すぎてあまり好きな言葉ではありません。ただ、その中でもこの本は読んでおいて良かったと思える一冊です。この本は「ポジショニング」のことに焦点を当てていますが、経営者が理解すべきはまさにこのポジショニングなのだと理解しました。僕にとって様々な戦術に興味はないのですが、根本にある戦略はマーケティングにおいて「ポジショニング」であるということです。ちなみにポジショニングという言葉は上記の『ストーリーとしての競争戦略』でも出てくるワードであり、マーケティングという領域を超えて、経営戦略・事業戦略の中心となる概念です。それを最もわかりやすく、重要性を説き、原理原則を唱えている本書は経営者にとっては重要な一冊だと思います。

採用

『ウォー・フォー・タレント』

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スタートアップ経営者にとって最も重要な仕事は採用であることはもはや疑いようがありません。それをこの一年間実感し続け、誰を採用するかで会社の未来が変わるんだと思いながら採用を続けています。スタートアップの初期はとにかく身の回りの人から採用していくしかありません。「リファラル採用」ってやつです。もちろんリファラル採用には無限の可能性があり、これが上手くできるかできないかで、企業の基本戦闘力が変わっていくというの自明のことです。ただし、リファラル採用だけで採用が完結できなくなってくるタイミングが来ます。その時に、どう戦略的に採用を行っていくのか。その基本戦略をこの本は教えてくれます。これまでの採用とこれからの採用の差分を明確に提示し、Employee Value Proposition(従業員のための価値提案)という新しい概念を作り出した本書はこれからのスタートアップ経営者にとっては必読の一冊ではないでしょうか。

CS

『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説』

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この投稿に「CS」というカテゴリーがあることに不思議な人もいるかもしれません。ただ、僕はこれからのwebサービスにおいて、このCSが本当に重要な役目を担うと思っており、競争力の源泉になると思っております。この考え方のベースにはこの『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説』があります。ザッポスこそ世界で最もCSが優れていると言われている企業であり、ザッポスが作られていく過程が描かれている本書は非常にエキサイティングで参考になります。ザッポスがなぜ、CSにこれほどのリソースを割くのか。なぜCSが競争力の源泉になるのか。その理由はこの本を読めばわかると思います。

組織論

『チームが機能するとはどういうことか』

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組織が大きくなってくることによって生まれる最大の課題。それは「チームとしてパフォーマンスをどう最大化させるか」。我々日本人は残念なことにチームとして働くことを何一つ学んでいません。つまり現在進行形で意識的に学ばない限り、この課題を解消させることはできない。これまでの知識だけで、ただコミュニケーションを増やせば解消できる課題ではない。これが、チームに関する僕の前提です。だからこそ、僕はこの本が大好きです。ここまでチームに焦点を当てて様々な解決策を提示している本はなかなかありません。特に「心理的安全と責任」という二次元マトリクスは本当にハッとさせられる図です。自分たちの組織は今どんな症状を抱えているのか、それに意識的に気づき対処しなければ、人が増えても問題は解決しない。スタートアップだからこそ、学ばなければいけない内容です。

HOLACRACY

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2016年、僕が一番衝撃を受けた一冊です。ここまで考え抜かれた実践的な組織論はありません。「HOLACRACY」自体を説明してしまうと非常に長くなってしまうので今回は省略しますが、企業が徐々に大きな成長していくと、「組織」になれねばならなず、これがスタートアップからすると非常に難しい。創業者からすれば、その必要性の理解に苦しみ、メンバーとの間でギャップが生じたり、またそれと同時にメンバーのストレスフルな環境になっていく。「組織」というものは決して自由な存在でいることはできず、いかにその枠組みを作るかということに創業者は多大な時間と労力をかけなければなりません。それに対して「HOLACRACY」というフレームワークは、多くの組織で模倣可能な枠組みを作ったという意味でまさに発明であり、スタートアップにとって大きな意味を持つと思っています。なぜならば、創業者にとって本当にやりたいことは組織作りではなく、プロダクト作りであり、このフレームワークを適用することで、組織作りのコストを最小化することができるからです。プロダクトを作ることに集中しても組織が正しく作られる。この理想的な状況を生み出すことを可能にした「HOLACRACY」。弊社ではまだ導入には至っていませんが、どこかのタイミングで導入されるかなと思っております。

仕事術

『全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』

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2016年。僕個人に最も大きな影響を与えた本はこの本だと思います。仕事のやり方が全く持って変わりました。タスク管理は紙メインになり、ファイルと紙とペンが必需品に。仕事の中で思考に使える時間が増え、アウトプットの生産性は大きく改善されました。ただ、この本に書いていあることをそのままやることは本当に難しい。習慣になるには相当な時間が必要で、この数年で習慣にできるかどうかは、僕の仕事人生の大きな分かれ目になると思っているくらいです。何か目の前の仕事に集中できない、次に何をやればいいか最善の選択ができていないように思う。そんなストレスを抱えている方にはぜひ読んで、実践してもらいたいです。

まとめ

こうやって振り返ると、自分がこの一年間、何に課題感を持っていて、どう解決しようとしていたのか、本を通してよくわかります。本という先人の知恵は僕にとって理想の世界へ連れて行ってくれる乗り物であり、現実の課題を解決するためのヒントを与えてくれる武器でもあります。そしてたくさんの本を読みますが、やはり思うのはただ読めばいいってわけではないということ。読んでも参考にならない本もありましたし、参考になっても実践できなければ何の意味もないことだって多々あります。その中で、やはり自分自身に大きな影響を与える本はそんなに多いわけではなく、そういう大切な本に出会えたら何回も読み自分のものにすることが非常に重要だと感じております。今回紹介した7冊は既に名著と呼ばれているものばかりであり、これからもずっと読まれ続ける本になるかと思います。皆さんも年末年始は読書で、夢の世界を楽しんでください。そして来年もSCOUTERを何卒よろしくお願い申し上げます。それでは、良いお年を。