株式会社SCOUTERのCOOが人事を尽くして考えた

渋谷で「SCOUTER」を運営する株式会社SCOUTERのCOOがスタートアップ・組織について書いているブログです。

webサービスを1年運営してわかった「スタートアップにおける真のユーザーファーストとは」

「SCOUTER」が一周年を迎えました

2017年3月31日に「SCOUTER」をリリースしてちょうど一年が経ちました。振り返ると激動の一年で、リリース時とは大きく異なる現状に、日々驚きながらも、その忙しさに喜びを感じる毎日です。

一周年当日には過去最大のイベントを開催し約100名ほどのスカウターさんに集まっていただきました。直接スカウターの声を聞けば聞くほど、このサービスは正しいことをやっており、もっともっと大きくしなければいけないという使命感を感じるとても良い機会でした。

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「ユーザーファースト」という言葉の意味

webサービスを創る上で良く聞く「ユーザーファースト」という言葉。この一年間を通して、僕はこの言葉の意味を履き違えて理解していたのではと感じております。というよりも、そもそも「ユーザーファースト」って言葉が抽象的過ぎて、具体的なサービス運営の指針にはなり得ない言葉なのかなと感じました。良く出てくるがよくわからない「ユーザーファースト」。この言葉をどう理解しておくと、我々のようなスタートアップにおいて有益なのか、この一年間で学んだことを通して記しておこうと思います。これは僕自身の経験と反省をもとに記す「スタートアップ」における「ユーザーファースト」の解釈です。

「ユーザーファースト」の一般解釈

まずは、世の中が「ユーザーファースト」という言葉をどう理解しているのかを見てみたいと思います。

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うーん。結論よくわからないって感じですかね(笑)一般的な解釈も多々ありすぎて、もはや意味をなしていない状況なのかと思います。ただ、その中でも共通項として見えてくるのは以下あたりでしょうか。

  • 価値提供を最大化するための「姿勢」のことを指している

  • ユーザーの意見をすごく聞く派と聞かない派に分かれる

  • 多くの人は無自覚的にこの言葉を使っている

ということで、わかったことは「ユーザーファースト」という言葉はその企業が置かれている文脈によって、大きく意味が変わりやすい言葉であるというところでしょうか。どの言葉にも文脈次第な部分は多いですが、特にその性質が強い言葉なのかと思います。そのため、僕が考える際には以下のような文脈の会社にとっての「ユーザーファースト」ということにします。

  • サービスをリリースして間もない

  • 会社を創業して間もない

  • リソースが非常に少ない

スタートアップにおける真のユーザーファースト

僕が一年間「SCOUTER」を運営して理解したユーザーファーストの定義は以下です。

「"今"価値を提供できるユーザーに、"今"価値を提供し切ることに集中すること」

この定義には三つの意味が含まれています。

  1. 提供できるそもそもの価値自体がすぐに向上することはない

  2. 価値は提供し切らないと提供したことにはならない

  3. 価値を提供する先は既存ユーザーしかいない

提供できるそもそもの価値自体がすぐに向上することはない

まず、サービスを提供するということは何らかの"価値"をユーザーに提供することになります。そしてこの提供価値自体に価値がないサービスなんてほとんどありません。人間が認知できる価値というのはそんなに数が多いわけではないですし、少なくとも創業者がその価値を感じ取ることができるのであれば、世の中にそれを価値と感じる人間は他にもいるはずです。そしてそれと同時に、提供価値自体を急激に向上させることなんてスタートアップにとってほぼ不可能です。最初に想像した提供価値を超える価値が提供できるのはサービスが成長仕切ったその後だと思います。よって、提供価値というのはサービスにとって常に一定で、それ自体が増減することは少ないということになります。

価値は提供し切らないと提供したことにはならない

では、その提供価値の高さは何によって決まるかというと、価値の何%をユーザーに感じ取ってもらったかという"伝達"の部分だと思います。提供価値自体は提供する相手さえ間違わなければ、本来価値が高いものです。ただ、それがどれだけ伝わっているかによって受け取る価値は変わってきます。

価値を提供する先は既存ユーザーしかいない

そして、最後に当たり前のことですが、価値を提供できる先はユーザーになってくれた方々しかいません。それ以外の人に価値を提供することはそもそも無理であり、既存ユーザー以外に関心を向けることに何の意味もありません。

既存ユーザーに正しく価値を伝えられるかどうかがスタートアップの成否をわける

スタートアップには勢いがあります。そのため、色んなことをやりたくなったり、新しいことにチャレンジしたくなる衝動に駆られます。新しいユーザーになりうる人はどんな人がいるのか、新しい機能をどうしようか、新しいビジネスモデルはどうしようか等。しかし、それと同時にスタートアップにはリソースがありません。スタートアップには時間がなく、勝負できる回数が少なく、そのため焦点を絞らなければいけない。そうなった時に何に焦点を絞るべきかというと、「価値を伝え切ること」だと学びました。それはサービスを最後まで使い切ってもらい、提供したい体験を丸ごと受け取ってもらうということです。スタートアップはここに焦点を絞る以外、勝ち目はありません。マーケティング予算は小さいし、そもそもの認知度も高くない。信頼も低い。その中で何で勝てるのか言えば、それは最後まで使ってくれるプロダクトになっているということ一点です。ユーザーは少なくても、最後まで使ってもらい、与えたい価値が与え切れているプロダクトなのであれば、それは勝てるプロダクトになります。もう少しビジネス的な表現に還元すると、それは「離脱」をいかに減らし、アクティブなユーザーを正しく積み上げることができるかということです。新規でユーザーが増えていても、それと同じだけ離脱が起きているのであれば、それは価値を受け取ってもらうことができていないプロダクトであり、ビジネス的にも成長する状況になっていないということです。だからこそスタートアップは「ユーザーファースト」でなければならない。"今"価値を提供できるユーザーに、"今"価値を提供し切ることに集中しなければいけないのです。

「ユーザーファースト」を実践するための6つの原則

では、具体的に「ユーザーファースト」を実践するには何をすればいいのか。僕たちが実際に1年間「SCOUTER」を運営して学んだことが6つあります。

1.サービスはとりあえず出す

ユーザーにとってはサービスが存在しないと、価値の受け取り方がありません。ビジネスモデルが決まったらどんな状況でもいいです。最低限の機能を備えたプロダクトをできる限り早くリリースするべきです。提供価値がそれなりのものであれば、最初のユーザーは必ず集まります。そして、実際に使ってもらわないと、どこでユーザーが止まるのか、離脱ポイントがわからないのです。我々も最初に想定していた離脱ポイントと実際の離脱ポイントは異なっていました。いくら頭の良い人でもこれだけは出してみないとわからない。最も早く正しい改善を行うためには、まずサービスを出すことが重要です。

2.数字をいつでも見れる状態にしておく

サービスをリリースする前に時間をかけて考えるべきことは一つだと思います。それはサービスのKPIを全て洗い出し、それを構造化した上で、最初から全て自動的に集計できるように設計すること。ユーザーがどこで離脱するかは、数字からしかわかりません。それを見ずに思い込みで改善を繰り返しても何の意味もないのです。作り手としてはすごく気にしていることが、ユーザーからしたら気にならないところだったということは良くあること。ユーザーの意思は数字から読み取るべきであり、その数字をできるだけ最小の労力で集計できるよう設計しておくべきです。サービスリリース時には後回しにしがちですが、実は最も丁寧にやっておくべきだったなと思います。

3.新規獲得よりも離脱の改善

最初のころは新規ユーザーの獲得に目を向けがちです。やっぱり新規ユーザーが増えると嬉しいので。ただ、それよりも圧倒的に離脱が起きていないか、起きているのであればどこで起きて、それはなぜで、どう改善したらいいのかを考えるほうが重要です。サービスの成長はアクティブユーザーの積み重ねであり、アクティブユーザーの増加に最も大きな影響を与えるのは離脱率です。ここに関しては以下の記事がとても参考になります。僕たちももっと早くこの事実に気づいておくべきでした。

note.mu

4.新規機能よりも既存オペレーションの改善

新規機能を作れば劇的に何かが変わる。そんな期待をもとに作り込んだ機能が何の数値改善にも繋がらなかった。ということはよくあります。そんなことをしている間に既存のユーザーの不満は募ります。ユーザーからすれば今の使い勝手に不満を持っているのであり、存在しない機能に対して不満や大きな期待をすることはありません。まずは今のオペレーションをどれだけ改善できるかに注力するべきです。そして特にオペレーションが多いサービスにとってadmin機能の充実化は非常に重要です。僕らも最初はすごく後回しになっていました。自分たちが何とか頑張ればできることや、システムを作らなくてもできることは後回しになり、人力で多大な時間をかけてオペレーションを回していました。しかし、よくよく考えるとこれはユーザーを待たせていたことを意味します。生産性が低く、ユーザーを待たせてしまうのであれば、まずはadmin機能から作り込むべきです。そして今のオペレーションがスムーズかつ効率的にできるようになったら、新しいことに着手すべきです。また、既存オペレーションを改善することは、結局生産性を上げ、新しいことに着手する時間も最終的に増えるので、ユーザーファースト的には非常に重要です。

5.上流よりも下流の改善から

サービスのどの部分から改善していくか。これは「ユーザーファースト」の定義に立ち返れば自ずと見えてきます。「ユーザーファースト」の狙いは価値を伝え切る確率を高めること。価値を伝え切れるユーザーを増やすことです。つまり、伝え切らないと何の意味もないので、最終コンバージョンに近い部分から改善していくべきです。いくら上流を改善しても、最終的なコンバージョンが低いのであれば、何の意味もありません。確かに最初はユーザー数が少ないため下流に行く人は少なく、あまり数値改善のインパクトが大きくならない可能性はあります。しかし、下流の数字を早期に改善することは、価値を受け取り切るユーザーを増やすことであり、最も重要な部分なのです。この重要性はグロースハックの「ARRRA」モデルに詳しく記載されております。

growiz.us

6.初回のユーザー接触に命をかける

唯一、下流の改善よりも重要な改善があるとしたら、それはユーザーとの「最初」の接触タイミングです。サービスを最初に使い始める時、運営がユーザーと最初にコミュニケーションをとる時。ここだけは例外として一番最初に徹底的に改善して、こだわったほうが良い部分です。なぜならば、人間は「第一印象」で対象物の大半を判断するので、第一印象が悪いともはやどうにもならないからです。もしかしたら、頑張って最後までサービスを使ってくれるユーザーも第一印象が悪いだけで利用を止めてしまう可能性もあります。特に運営とのコミュニケーションが発生するタイプのサービスは、ここのコミュニケーションは死ぬほど重要です。どういう対応をされるかで、多少完成度が低くても使ってみようと思ってもらえるか、少しでもダメな部分があったら止めてしまうかその分岐になるのです。そのため、SCOUTERではCSを非常に重要視して、コミュニケーションにはとにかく丁寧かつ最速で行っております。今の時代だからこそ、人間の温かみはサービスを使い続けてもらえる理由になります。

スタートアップこそ「ユーザーファースト」であるべき

「ユーザーファースト」とはリソースが少ないスタートアップが巨人に勝つための「レバレッジ」なのです。特にtoC向けサービスにおいて個人に与えることができる「価値」そのものに大きな差分は出ないでしょう。どれだけリソースがあっても「価値」そのものを増幅させることは非常に難しいのです。その中で、重要なのはとにかく忙しい現代人に、いかに短時間で確実に価値を提供し切り、体験してもらうかです。巨人は多くの人員でプロダクトを一気に作りきります。そして巨額のマーケティングコストで一気にユーザーを獲得します。しかし、だからと言って全ての人に価値を提供し切ることはできません。むしろ対象者が多ければ多いほど伝達率は低くなるでしょう。だからこそ、伝達率にスタートアップの勝機があるのです。価値の伝達率が高いプロダクトを完成させることができれば、それは支持されるプロダクトになり、アクティブなユーザーが確実に積み重なり、最後は勝つことができるのです。

SCOUTERでは真のユーザーファーストを実現できる人材を積極的に募集しております

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