株式会社SCOUTERのCOOが人事を尽くして考えた

渋谷で「SCOUTER」を運営する株式会社SCOUTERのCOOがスタートアップ・組織について書いているブログです。

# 2017年を振り返りシリーズAのスタートアップが後悔してる7つのこと

明けましておめでとうございます。随分と更新が空いてしまいました。2017年は会社としても個人としても本当に色々なことがあり、なかなかブログを更新できない期間が続いてしまいました。今年はインプットの量を圧倒的に増やし、アウトプットに繋げていきたいと思っております。今年もよろしくお願い申し上げます。

シリーズAの会社って選択肢が無数にある

2017年を振り返って、まず思うことはシリーズAというスタートアップの期間というのは本当に難しい状況なんだなということです。スタートアップのフェーズにおいて、シリーズA前後が一番難しいのではないかと思ってしまいます。おそらく、その要因の会社として取れる選択肢が最も多いからなのかもしれません。シリーズAまではとにかくプロダクトを作る期間。やることは顧客に求められるプロダクトを作るだけ。シリーズBを超えるあたりでは、既に勝ちパターンが見えてきて、組織の形も出来上がっているころ。いかに効率的に投資を行い、組織を運用していくかが重要になってきます(もちろん、これが非常に難しいことは承知しております)。その中で、シリーズAというのは、プロダクトの勝ちパターンが見えきっているわけでもない、組織体制が固まっているわけでもない、どこに投資をすればどのようなリターンが返ってくるかわからず、ひたすら試行錯誤の連続。正直言って、合理的な選択をし続けられる状況にはなりにくい。株主も増えてきて、それぞれのアドバイスも違ければ、IPOを視野に入れた経営をしていかなければいけなくなり、制限も増えてくる。そんなあらゆる不確実性がこの時期に集中する。シリーズAで成長が止まる企業が多いのはそんな経営の難しさを起業家が初めて体験し、それに適応するまでに時間がかかるからなんだろうと思います。今回は、2017年を振り返って、後悔していることを書いてみたいと思います。主に、「もっと早くこうしていれば」ネタが多くなるかと思います。

その1_もっと早く経理担当者を入れればよかった

今年の6月くらいまではバックオフィス業務をやる人は誰もおらず、自分が全てやってました。極限まで効率化すると、そこまで多大なリソースは奪われない。わざわざ人を入れるほどでもないかなと思いながらずっとやってきてました。ただ、年の途中から経理系と労務系を処理してくれる週3のバックオフィス経験者に手伝ってもらえるようになり、ここで愕然としました。確かに自分のリソースとして空いたのは20%程度です。ただ、それ以上に脳のCPUがガラッと空き、期限によるストレスも減り、圧倒的にクリエイティブに考えられる時間が増えました。人間というのはマルチタスクができてると思っている人ほど、おそらく自分の潜在パフォーマンスに気づいていません。なぜならこれまでの人生の中で限界まで一つのことに集中したことがないからです。僕はこの歳になって初めてマルチタスクから逃れ、本当に集中するということがどういうことか体感しました。それ以降、僕はほぼ全てのバックオフィス業務をお任せするようにしています。できるからやるというスタンスは経営者のリソース分配として不適切。従業員が1桁のうちに、バックオフィス業務は経営者がやらなくていい状況を作っておけばと後悔しております。

その2_もっと早く秘書的な人を入れればよかった

こちらも上の文脈と一緒。ただ、これはバックオフィスというよりはもっと雑務的なこと。この雑務が見渡すとめちゃめちゃ多いんです。そして、その雑務をそれぞれのメンバーがみんな少しずつ抱えながら、仕事をしている。これは非常に生産性が悪い。まずは経営者の雑務を剥がす。そして、次にメンバーの雑務も極力剥がす。それを任せられ、かつ丁寧にクオリティの高い仕事をしてくれる秘書的な人員が一人入っただけで社内全体の生産性が非常に上がりました。これはメンバーが10人を超えたあたりでいても良かったなと思っております。コストとしては月に20万ちょっと。確かにスタートアップとしては大きな金額ですが、コミットメンバーの生産性を考えると、十分な見返りがある投資です。

その3_もっと早く組織のことだけを考える人を入れればよかった

弊社にはつい最近まで正社員で経営企画・管理部に所属しているメンバーがいませんでした。全員が事業部に所属していて、事業のことを考えている。メンバーが少なかった時はそれで構わなかったのですが、メンバーが10人超えたあたりから、どうしても組織に亀裂が入ってくる。それもそのはずで、その亀裂が入る原因を集中して考える人もいなければ、対処も場当たり的。そして、メンバーの不満は組織という抽象的なものが対象になっていく。この状態すごい深刻です。事業が上手くっていない理由を、みんなが組織のせいにできるということです。組織に不満があり、それの解消に動けていないということは、成果が出ないことを正当化できる材料が増えるという他責思考を助長します。弊社では最近、組織のことだけを考える役割の人員を配置し、組織問題の調査・原因の検討・対策の実行まで行う窓口をしっかりと作ることで、組織自体の改善を図りながら、メンバーの意識を変えることにも成功しました。専属のメンバーを一人つけるということは、組織の問題を改善していくという経営側のメッセージにもなるので、これも10人超えたあたりから一人担当にすべきだったなと後悔しております。

その4_もっと経営者からのメッセージを伝える機会を増やせばよかった

シリーズAの時期って本当に色々あります。上手くいかないことの連続で、目標が未達になることもあれば、戦略を変更することもある。人の出入りも増えてきて、メンバーの経営に対する不信感が生まれる要因が時期的に増えてしまいます。ここで経営ができることって二つしかありません。数字として成果を残すことと経営としてのメッセージを伝えること。なぜ計画を変更するのか、なぜ戦略を変更するのか、今後の会社をどう考えているのか、失敗をどう受け止めているのか。非常に意図的に伝えない限り、メンバーには伝わらないんだなということを改めて実感しました。経営者としても上手くいっていない時はそれを隠したり、認められなかったりしがち。ただ、そこで強がっても何のいいこともなく、素直に認めた上で、次どうしていくのか、会社として変えること・変えないことは何なのかを明確にメッセージとして伝えていく場をもっと増やしていかなければいけなかったと思います。理想は週に一回はそのような機会を設けるべきかと思います。

その5_もっと採用選考に時間をかければよかった

もちろん、候補者探しに時間をかけるのは当然ですが、一個一個の選考にもっと時間をかけるべきでした。特に一次面接を超えた人に対して、その後一回/一時間の面接を何度重ねようと、これはわからないということがこの一年感じたことです。シリーズAの時期ってとにかく人手不足でやりたい打ち手が無数にあるにも関わらず、人がいないため、良さそうな人がいたらとりあえず採用しておこうという思考になりがちです。ただ、これが本当に組織を壊す要因で、経歴では本当に人はわからない。ピカピカの30代よりも新卒二年目の子の方が活躍するなんてザラで、正解のない問題に取り組んでいるスタートアップに過去の経歴は無意味。そんな中で、どう相手を見極めていくかはもっと真剣に取り組む課題でした。ここには惜しみない時間をかけて、できる限り入口の時点でリスクを最低限にする(もちろん、0にはできないが)。個人的には今振り返ると「その人と一晩語り合えることができるか」という物差しで見るべきだったなと思います。というか、本当に一晩一緒に過ごせるか、試してみる勢いの方が良いと今は思っています。

その6_もっと勉強する時間を確保すべきだった

どうしても現場が気になってしまうのがこの頃だと思います。ただ、せっかく軌道に乗ってきた時に次の打ち手を経営側が提示できなかったら、経営者の存在理由がない。最近、その瞬間を想像するとゾッとしてしまいます。もっとメンバーに任せられる仕事はないか考え、少し不安でも任せる。そのぶん、もっと次のことを考えるための勉強の時間を確保すべきであり、それをすることが経営者の重要な仕事なんだという自覚を持つべきだったと反省しております。そのため、今年は徹底的に学ぶ時間を確保することが個人的に重要なテーマです。

その7_もっとメンバーの考えを知れる仕組みを作るべきだった

会社としてある大きな決断を下すとき、初めて事前にメンバーの意見を正しく聞ける機会がありました。その時は、経営者ではなく別のメンバーがインタビューという形で1時間ずつ各メンバーにヒアリングをし、それを文字起こししたものを見ました。この時に、今までどれだけメンバーの意見を無視してきたか、そしてどれだけメンバーが正しい意見を持っているのかを痛感しました。ただ、これおそらくですが、経営者が意識して聞こうと思ってるだけでは、本当にメンバーの本音を知り得ることはできないと思っています。それはコミュニケーションをとる時間が足りないこともそうだし、経営者と従業員という関係上、やはり話しづらいこともあるだろうし。これをいかに吸い上げる仕組みを作るかが経営者の仕事だし、それができてる時と、できていない時では組織の強さが全く違うだろうなと思っております。経営者はいろんな人の意見を聞くべきです。ただ、その時によく外の人間の意見を聞きがちです。成功している人の意見、見識が深い人の意見、専門家の意見。たくさんの人の意見を聞こうと努めますが、意外と社員の意見を真剣に聞こうとする人は少ないのかもしれません。社員の意見には真実がたくさん含まれている。それを思い知った一年であり、来年はそれを仕組みで吸い上げられるようにしていきたいと思っております。

重要なことは経営者が最も大事なことが何かをわかっていること

シリーズAという不確実性が高い期間において、何が一番成否を分けるのかと問われれば、それは経営者自身が「自社がシリーズAの次へ進むために何が最も重要で、何に時間を最も割くべきで、そのためにできることを全て実行できているか」だと思います。目の前に踊らされず、最も重要なことに集中する。それが経営者の仕事だと思います。重要なことは各社それぞれ必ず違います。どこかの教科書に答えが書いてあるわけではありません。その答えのない問いに対して考え続けることが重要で、そこに焦点を合わせ続けられる集中力こそ、シリーズAの時期に求められることだと感じた2017年でした。今年は集中を切らさずに1年間走りきれるよう、メンバーを信頼し、十分な休息も取りながら、会社の未来を考え続けたいと思います。

それでは今年もよろしくお願いいたします。