株式会社SCOUTERのCOOが人事を尽くして考えた

渋谷で「SCOUTER」を運営する株式会社SCOUTERのCOOがスタートアップ・組織について書いているブログです。

突然暇になったCOOが真っ先に手をつけた5つのこと

COOはなんでも屋

ついこの間までは新規事業の立ち上げを行なっていたのですが、最近その事業に事業責任者をつけて自分は現場から離れることになりました。もちろんその事業責任者を支援していきながら、その事業を成長させる責任を持つことには変わりないのですが、これまで9割くらい時間を割いていたものがポンとなくなった訳です。ちょうど事業も軌道に乗ってきて、これからどんどんアクセルを踏んでいきたいと思っているタイミングでCOOとして何をするべきか真剣に考えまして、まずは5つのことに取り組んでおります。

成長を止めない設計がテーマ

突然目の前からやることがなくなり、会社の状況を冷静に見つめた上で、今何をやるべきかを考えた結果、「設計」が重要だと考えました。これまでは真っ当に設計を行う時間がなく、とにかく走りながら、作りながら、後付けで設計をしていったというのが正直なところでした。初期のスタートアップはそれが正しいと思いますし、そうじゃないとどうしてもスピードが遅くなりますし、リソース足らないですし、設計してもすぐにピボットだったり方針が変わるのが当たり前なので、真っ当な設計というのはコスパが悪いんです。ただ、ここに来て目の前に成長シナリオが描かれており、その実現可能性が高いと判断した時に、このままだと事業以外の要因で成長が止まるのではないかという危機感を感じました。事業以外の要因で成長が止まるって恐ろしく勿体ないことであり、予防法は多数ある訳なので、今後の成長に耐えうる拡張性の高い組織を設計しようと決めた次第です。

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1.IPO事例の研究

まず最初にやったのはIPO事例の研究です。IPOは狙ってするものであり、どうしたらIPOまで到達するのかは経営メンバーで徹底的に共有されているべきものです。とにかく社長がIPOするぞ!!って言って、どうなったらIPOできるのか、どのようなIPOを目指すのか、何を目的にIPOをするのかとかが共有されてないとただの地獄ですよね。なので、まずは先行事例を自分たちの手で調べて、どういうIPO事例が自分たちのベンチマークになるのか、ベンチマークしている企業がどういうIPOをしているのか等の肌感覚を身につけたく研究を始めました。色々と調べて行くと、同じ業界でも知らない競合が見つかったり、自分達のイメージの時価総額と実際のギャップに驚いたり、知らないことがたくさん出て来て、事業計画の設計に非常に役立つ訳です。未知のIPOという目標に対して、これまでは事業作りというプロセスを通してなんとなく近づいて行っているというイメージでしたが、この研究作業を通して「経営」によって意図的にIPOに近づけていける感覚を養えております。以下、一社ごとにだいたい調査する内容です。

  • 上場時の時価総額等の基本情報
  • 上場までの財務ハイライト
  • 株主情報
  • 経営者情報
  • 過去の資金調達の内容
  • エクイティストーリー
  • BSの構造

上記を掴んでいくと時価総額のつき方の感覚であったり、資金調達のパターンであったり、事業の成長ドライバーが実態としてわかってくるので、自社の場合どうなるかに落とし込みやすくなりました。

2.採用計画の作成

次に手をつけたのが、採用計画。これまでももちろんざっくりとは作っていましたが、人事担当もつけたということで今回かなり精緻に作り込みました。ポイントは採用人数だけでなく、どんなスキルセットの人員をいつまでに、どのような手法で採用するかまでセットで作成したこと。成長局面にあるスタートアップにおいて、採用できないことによる成長の阻害は致命的なので、特に採用手法については議論を重ねどうやっても計画通り採用できる採用予算を計画。また、できる限り予算を投じるものに関しては今後の採用のアセットになるものか、人事工数を削減できるものに限定。人事の労力をクロージングに集中できるよう計画を立てることで、投資対効果の向上と労力が少ない中でも目標達成が可能なものになったと思っております。ここら辺の詳細はまた別の記事で書こうと思います。

3.評価制度の設計

評価制度は本当に難しいので、試行錯誤の真っ只中ですが組織のコアだと認識しているので、かなり検討を重ねております。感覚とか無限のエネルギーをもとに生きてる社長とかは評価制度の重要性を過小評価しがちなんですが、組織ってほとんどが普通の人間で構成されているわけで、めちゃめちゃ重要なわけです。"普通"の人間は"他人の評価"の中で生きてるので。で、これが不平等とか不公平とかって言われると、組織の中で悪いことしか起きないわけで、それが1~2人だったら個別対応できるのですが、個別対応が不可能になってくると制度で担保する必要があるんですよね。ただ一度会社の思想にマッチするものができたら、かなりリターンは大きくて、制度が気に入らない人はそもそも相性が悪い人なので早く去ってもらった方が良いということになり、個人よりも制度に対する感情の方が色んなことが対処しやすくなるかなと思っております。というわけで、現在進行系で設計中でございます。

4.入社後のフォロープロジェクトの策定

結構スタートアップで疎かになりがちなのが、この入社後のフォローアップだと思っております。採用したメンバーが活躍するかしないかというのはその人の能力に依存してるわけじゃないと思うんですよね。採用したメンバーのその後の活躍のキードライバーは、「入社後どれだけ早く成功体験を積んでもらえたか」だと思っていて、それってかなりフォローアップで支援できることだと思うわけです。逆に創業メンバーって途中から組織に入るっていう経験をあまり知らないので、この視点抜けがちなんですが、普通に考えて入社してすぐに成果出せって結構無茶ですよね。会社の基本的な生態系というか、成果を出すための基本情報を知らない中で成果を出すってのはあまりにもハードモードなわけです。なので、入社後のフォローアップを体系化して仕組み化しておくことで、最短で「必要な情報」や「良好な人間関係」を提供することができ、入社後の活躍度合いを高めることができるのです。これは採用スピードを上げる前にやっておいた方が良い、一人の採用効果を最大化する最も重要な活動だと思います。

5.最適なBS構造の思案

これまではほぼPLのみの経営をしていたんですが、やはりIPO事例を見ていく中でBSのコントロールの重要性に気付かされます。事業の特製ごとにBSの構成はかなり変化があり、資本の効率性を高めるというマーケットの要求に応えるためにはIPOを意識したころから、その訓練をしておいた方が良いなと。特にCOOはこの先CFOとのハイレベルな財務的コミュニケーションが発生する可能性も高いわけで、今CFOがいてもいなくても、誰かに任せるのではなく自分の中に考えを持っておいた方が良いと考えます。僕の理解では事業ポートフォリオを高解像度で最も理解しているのはCOOであり、その事業側の観点をCFOに正しくぶつける役割を担うべきだと思うわけです。財務的な選択肢も今後増えていく中で、組織設計の一環としてBS側のことを考える時間は確保しておくべきだと思います。

結論COOは面白い仕事です

ということで、ついこの間まで一つの事業のことばかり考えていたわけですが、今は組織のことであったり中長期的な事業計画を考えたりしてるわけで、本当にCOOというのは会社の状況によって色んなことをやるポジションだなと思うわけです。まぁ、結論的にはCOOってやっぱり面白い仕事ですね。今日の記事はそれが言いたかっただけなのかもしれません。