株式会社SCOUTERのCOOが人事を尽くして考えた

渋谷で「SCOUTER」を運営する株式会社SCOUTERのCOOがスタートアップ・組織について書いているブログです。

"名詞"で考えるキャリア論はもう終わり。新入社員へ告ぐ。「キャリアは"動詞"で考えろ」

「名詞」で考えるキャリア論の時代は終わった

新年度が始まり、新社会人になった方、転職をして新しい場所で働く方。みなさんにお聞きしたいことがあります。

「あなたはご自身のキャリアビジョンを持っていますか?」

YESと答える人の方が少ないかと思います。キャリアビジョンってなんか難しい。考えるの大変。自分のやりたいことなんてわからない。就職活動でも転職活動でもよく聞かれるので、キャリアビジョンを持っていない自分に嫌気がさすこともあるかもしれませんが、はっきり言います。キャリアビジョンは無意味なので大丈夫です。全く問題ありません。なぜか。あなたの描くキャリアビジョンがその通りに行くことなんてまずないからです。時代の変化が早すぎる今、「職種名」で考えるキャリアプランに意味はありません。10年前には「youtuber」という仕事はありませんでした。「データサイエンティスト」という職業もほぼなかったでしょう。そう、10年以上のスパンで考えた時に、今と同じ仕事があるとは限らないですし、今存在しない仕事もたくさんあるのです。今、キャリアビジョンを考え、決め、その通りに実現することを目指すということは、将来存在しない仕事を選択肢に入れているということであり、逆に今存在しない選択肢を含めずに決めるということです。そんなキャリアの計画をあなたの人生として決めてしまうのはあまりにも、もったいないことなのです。

人材業界で会社を起こし、これまで多数の方のキャリア相談に乗ってきました。今回はキャリアという概念のど真ん中に身を置いているものとして見えてきた、これからのキャリア論について書いてみたいと思います。結論はタイトルの通りキャリアは「動詞」から考えるべきであるという内容になっております。サマリーは以下の表のみで伝わるかと思います。少しでも参考になったら幸いです。

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「名詞」で考えることの脆さ

「名詞」で考えるキャリアビジョンとはどのようなものか。例えばこんなの。

私は新卒で総合コンサルティング企業に就職して、経営の基礎を学びます。様々な業界に触れ、マネージャーまで上り詰めたいと考えております。その間にMBAを取得して、経営への知見を深めます。次に事業会社のマーケティング部門へ転職し、ブランド戦略を担当。商品をヒットさせるノウハウを学びます。そしてベンチャー企業にて新規事業の立ち上げにトライ。そこでSNS関連のサービスを事業責任者として開発したいと考えています。

非常に極端な例ですが、この文章はほとんど「名詞」で構成されているんです。「コンサルティング」「マネージャー」「MBA」「マーケティング」等。こういう名詞を組み合わせたキャリアビジョンにたいして価値はありません。名詞には以下の特徴があるからです。

  • 名詞が社会の変化によって生まれたり、消えたりする
  • 名詞自体の意味/解釈が社会の変化に伴い変わる
  • 人の名詞に対する興味・関心は変わりやすい

特に人間の名詞に対する興味・関心の移ろいというのは自分が想像している以上のものだと思います。人生好きになったものを永遠好きでられる自信ありますか?子どもの頃好きだったけど、今は興味ないものありませんか?これまで興味なかったけど、突然好きになったものとかありませんか?

「名詞」というのはつまるところ外部環境に非常に依存するんです。名詞で作ったあなたのキャリアビジョンは社会の変化・関わる人の変化等で簡単に変わってしまう非常に脆いものなのです。

これまでの時代は、一人の労働者=一つの名詞で生きる時代でした。20代で始めた仕事を定年まで勤め上げる。これが基本です。そのような時代には名詞で考えることが有効だったと思います。しかし、これからの時代はどうか。これからは100年仕事を続けることを求められる時代です。一つの職業で100年働き続けることが非常に難しい。そして社会の変化のスピードが指数関数的に上がっている。一つの名詞にしがみつくことはできないし、そんな人生はつまらないものになるでしょう。この人生100年時代への変化については『ライフシフト』という名著があります。ぜひ目を通しておくと良いかもしれません。

では、「名詞」で考えるべきではないとすれば、どうすれば良いのか。キャリアについて何も考えなくていいのかというとそれは違います。自分の今後のキャリアや自分の市場価値について考え、意識して日々働いている人と、何も考えていない人の差には大きすぎる隔たりが生まれます。目の前の仕事に対して取り組む姿勢や、全ての意思決定に関する質が変わり、それが積もると大きなビジネスマンとしての価値の差になるのです。だからこそ、キャリアに対する考え方をアップデートする必要があります。

キャリアは「動詞」で考える

キャリアは「名詞」でなく「動詞」で考える。これをオススメします。動詞で考えるとはどういうことか。それはこの質問に対する答えを考えることです。

「あなたが夢中になってしまう動詞は何ですか?」

人生を動詞という視点から考えることで、自分の揺るがないものを見つけるということが新しいキャリア論だと考えております。自分の人生を思い返してください。きっと好きな動作はずっとやってきたし、嫌いな動作はずっと避けてきたでしょう。例えば「計画する」が好きな人もいるでしょう。自分の考えを「説得する」ことが好きな人もいます。みんなの意見を「まとめる」ことが好きな人もいるでしょう。逆に自分の意見を「主張する」ことが嫌いな人は多いかもしれません。ちなみに私は「電話する」という動作がどうしても嫌いです。このように人には好きな動詞と嫌いな動詞があるはずなのです。そして、それが今後の人生で劇的に変わるイメージはなかなか持てないと思います。重要なことは好き嫌いが「名詞」だと変化する可能性が高いが、「動詞」だと揺るがないということです。好きな動作はいつまでも好きであり、好きな動作を仕事にすることがこれからの重要なキャリア戦略となります。

市場価値は「得意」ではなく「好き」で高める

よく仕事を得意・不得意で考える人がいます。特に若い方はこの傾向が強いようです。しかし、私はこの考えに否定派です。なぜなら若い頃に自分が認知している得意・不得意は誤差でしかないからです。おそらくこの認知はこれまでの学生時代の活動の結果から得た認知でしょう。しかし、学生時代の活動はコミットレベルがビジネスの世界とはやはりレベルが違います。すごく限られた時間・リソース等の中で、生まれる差なんて大したことありません。現状の位置よりも今後の伸び代の方が圧倒的に重要なのです。そして伸び代は「好き」なことの方が圧倒的に伸びるのです。

「動詞」×「好き」=最高のキャリア戦略

好きな動詞を見つけ、その動詞にコミットすることが自分の伸び代を伸ばす最善の方法です。あなたにも必ずあるはずです。対象物が変わってきたとしても、妙に好きで暇があるとやってしまう「動作」が。その動作が占める割合が多い仕事こそ、あなたが取り組むべき仕事・職業です。なぜなら世の中に存在する職種とは「ある似通った動作を集約し名詞にしたもの」だからです。例えば営業(売り切り型の営業)というのは以下のように表現することができます。

営業→お客様の話を「聞き」、課題を解決できる内容を「提案し」、提案を受け入れてもらうよう「説得する」仕事

このように自分の好きな動詞・動作から職種である名詞へと考えていくのが適切な順番なのです。そして動詞から考えると思いもよらぬ気づきを得ることができたりします。動詞は名詞を横断することができるのです。つまり、好きな動詞を見つけることは、今の自分が想像もしていない職種への可能性も見えてくるのです。例えば「仮説を立てる」という動詞が好きな場合、もしかしたら「営業」の仕事を好きになれると同時に「データサイエンティスト」の仕事も好きになれるかもしれないからです。両方とも「仮説を立てる」回数が多いからです。扱う対象はお客様とデータと真逆で、名詞から考えれば絶対に繋がらない仕事ですが、動詞から考えるとそこに繋がりが見える可能性もある。

市場価値とは市場の中での"希少性”で決まります。希少であることが重要で、希少であるためには組み合わせることが重要。その時に、動詞を活用したキャリアの組み合わせは非常に有効なのです。「データ分析もできる、営業マン」ってだけで希少性は恐ろしく上がるのです。世の中には優秀な営業マンはいくらでもいますが、「データ分析ができる」営業マンはほとんどいないのです。だからこそ、「動詞」×「好き」で見つけた自分なりのキャリアの組み合わせは自分の市場価値を上げるためのヒントになるのです。

市場価値の上げ方は藤原和博さんの考え方が非常に参考になります。

president.jp

COO 山田の場合

ここからは新しいキャリア論を実例を私、山田の場合で見てみましょう。私の好きな動詞は以下の三つです。

  • 体系化する
  • 予測する
  • 準備する

この三つの動作に関しては対象物が何であろうが好きな場合が多いですね。特に体系化するはどんなものでもワクワクしますし、熱中してしまいます。たとえその結果が上手く行かなかったとしてもその動作を"やること自体"が好きなのです。予測するに関しては趣味が競馬なのですが、競馬を好きになった理由がまさに予測するゲームだからです。競馬のギャンブル性が好きというよりも、ギャンブルの中で最も予測性が強かった競馬に興味がいったという感じですね。

ということで、この三つの動詞で山田はキャリアを考えているわけですが具体的にはどんな仕事をしていくことになるのでしょうか。それを図にしたものがこれです。

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「事業計画」×「経営管理」×「組織人事」が今の社会の名詞で説明すると私が取り組むことであり、狙っているポジショニングでございます。自分がこのポジショニングを目指し、実際の仕事として実行しているからこそ、SCOUTER社にはまだCFOが不要であるという判断を下したり、逆にこの領域以外の部分は代表の中嶋にやってもらっています。COOという肩書きは非常に曖昧で、悩みが多いポジションになりやすいですが、私個人としては非常に明確であり自分なりのCOO像を見出すことができております。それは全て名詞ではなく、動詞をもとに考えていったからだと思います。

「動詞」であなたの「集中」を見つけてください

仕事のために人生はあるのではない。人生のために仕事はある。キャリア論を語るときにはこれが原則のはずです。人生のための仕事を得ることがキャリア論のあるべき姿だと思います。しかし、現代のキャリア論は仕事のための人生を助長しているように思えます。キャリアに「べき論」が蔓延し、みんなが同じことを言い出す。そんなキャリア論に意味はあるのでしょうか?

幸せを目的としたキャリア論を考える際に非常に参考なる研究があります。こちらの動画から研究の主張を見ることができます。

www.ted.com

幸せとは目の前のことに「集中」することで生まれるというが研究の主張です。そしてこれは私の経験上でも非常に正しいように感じます。幸せになりたいのであれば、仕事を好きな「動作」で埋め尽くす。そして好きな「動作」に没頭し「集中する」。するとこんな好循環が生まれます。

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そして、このループが「動詞」という軸をもとに複数の「名詞」を横断し、どんどん高次元になっていく。そうやって螺旋のループを上がっていくと、気づいた時には自分自身が唯一無二の存在として市場価値の高いビジネスマンになっているのです。未来を正確に予測することは誰にもできません。なので、名詞で考えても正確にそこに行きつけるわけではありません。そうではなく、「動詞」という軸を見出しておく。その軸にハマるその時の「名詞/職種/仕事」に集中していくことが自分の市場価値を高める近道だと思います。

これまでは「経験」が何よりも求められる時代でした。しかし今や経験は有効ではなくなりつつあります。思えば経験というのは「名詞」で語る行為です。これから求められるのは"あなたはどんな動作を上手くできるのか"という「スキル」であり、「動詞」で語る行為です。

経験よりもスキルが求められる時代。そんな時代に必要なキャリア論こそ「動詞」で考えるキャリア論なのです。あなたがより幸せになるために、自分な好きな「動詞」からこれからのキャリアを考えてみてはいかがでしょうか。