株式会社SCOUTERのCOOが人事を尽くして考えた

渋谷で「SCOUTER」を運営する株式会社SCOUTERのCOOがスタートアップ・組織について書いているブログです。

COOが伝えたい「マネージャー」になったら最初に改めるべき5つの考え

スタートアップにマネジメントは必要か

SCOUTER社も最近急激に組織らしくなってきており、現在4人のマネージャーが頑張ってくれております。個人的にはマネージャーという言葉が嫌いなので(嫌いな理由は別記事でいつか書きます)、社内では別の呼び方をしているのですが、今回は一般的なマネージャーという言葉を使っていきます。スタートアップの初期はマネージャーなんて概念は当然ありません。マネジメントしなければならないような人材をとった時点で失敗。そんな世界です。しかし、事業が大きくなり組織が大きくなるとマネジメントは当然必要になってきます。マネジメントをする組織にしたくないと抗うのは最近の一つの傾向にはなってきますが、僕的にはそれに抗うコストが効果に見合わないなと思っております。なぜなら、事業が大きくなっていくと"つまらない"仕事も比例して増えていくからです。どんなに生産性を上げても、いずれ仕事は"定型化"していきます。定型化した仕事をこなすことは、マネジメントされたくない優秀な人材からすると、"つまらない"仕事になるのです。なので、組織全員がマネジメントされたくない人で揃えるというのは、逆にめんどくさいことだなと。面白い仕事を常に用意しないといけないので。世の中にはマネジメントされたいという人の方が大半で、ある程度仕事が定型化されており、責任の範囲も限られていることを好むんですよね。あまり考えないで良いのでその方が楽なんです。そういうことを好む人がたくさんいるので、それぞれ好きなことを分業しましょうという考え方の方が僕は好きです。なので、事業がそれなりの大きさになればマネジメントは必然の活動になり、当然マネージャーも必要になります。あくまでも個人的な考えですが、マネジメントする側、される側どちらが偉いとかはあまりないと思います。人間としてどちらの方を好むかですし、それぞれどちらが欠けても上手くはいかないわけで、お互いに補って、リスペクトできてればそれで良いかなと思います。逆にマネジメントする立場になったからって、マネジメント対象者を見下して、バカにする人は嫌いです。上司がそういう人だったら、環境変えた方がいいかもしれませんね。

ある日突然マネージャーに

ということで、スタートアップもいつか、マネージャーが必要な時が来るわけです。しかし、それまでにマネジメントがいなかった世界なので、ロールモデルとなるマネージャーがいるわけでもない。マネージャー補佐みたいな仕事もしたことない中で、突然「じゃあ君マネージャーね」となるわけです。当然本人からすると要求されることも違ければ成果の出し方も違う。何をやって良いのかわからないし、頑張っても上手くいかず苦しむのが大半だと思います。こういう時に基本的なマネジメントを知っている人が社内にいて、ただ既存のマネジメントを押し付けるのではなく、その会社にあったマネジメントを授けられるような人がいるとスムーズなんだろうなと思いつつ、逆にそういうマネジメント経験者って、創業期にはあまり活躍できない可能性も高いのでそういう人がいる可能性はあまり高くないなと(特に創業者が若い場合)。なので、マネージャーには創業期のコアメンバーがそのままなるパターンが多いと思います。そして、まさに今のSCOUTER社もそのフェーズに入りました。そこで、今回は彼らに対して伝えたいことをまとめました。同じような境遇の方には参考になるかと思います。

「ビジネス」で考えるな。「戦」で考えろ。

まず、マネジメントレイヤーまで上がった人たちは「スタートアップ」とか「ビジネス」という枠組みだけで物事を考えるのはやめた方が良いと思います。どうしても"綺麗"になりすぎちゃうので。実態はもっと過酷で残酷なものです。すごい希望を持ってスタートアップに参加しているはわかるのですが、だからこそもっとリアリティを持って考えるべきだなと。そうなった時にどういうイメージが一番参考になるかと言うと、やっぱり「戦」なんですよね。ビジネスの根源は戦争であり、そこから学ぶべきことはあまりにも大きいんです。なので、まずは戦の視点でプレイヤーとマネージャーの違いをまとめたいと思います。

マネージャーは将軍である

マネージャーっていきなり言われて、マネージャーってなんやねんと思うかと思いますが、将軍だと思ってください。国王が戦うぞって言って、軍師が戦略を考える。これは主に本部で行われることであり、会社で言うと取締役会です。そして戦う相手と全体の戦略が決まるとそこで登場するのが将軍です。

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*国王の嬴政に見送られ出陣する王騎将軍

将軍は軍を率いてその戦いを勝利へと導くのがミッション。明らかに一人の兵隊とは背負うものが違いますね。想像してみてください。自分が一人の兵隊から将軍になるなったらどんな感覚に襲われるのか。想像しただけで恐ろしいですよね。責任の大きさ、背負うものの大きさ。これと同じ感覚をマネージャーになった時に持ったでしょうか?将軍というのは以下の三つを司ります。

  1. 戦いの勝ち負け
  2. 部下の生き死に
  3. 自軍の功績

将軍一人次第で、勝つか負けるか、生きるか死ぬか、勝って生還したとしても評価されるかされないかが決まるのです。そして、それは現代のマネージャーも同様です。目標を達成できるかどうか、部下の仕事人生が生きるのか死んだ仕事人生を送るのか、チームが認められるのか、無視されるのか。それはマネージャー次第なのです。確かに重いです。でも、この感覚を持ったマネージャーは圧倒的に強いです。マネージャーって何なんだろうって思ったら戦の場に立っていることを想像してください。それだけで強くなれます。

f:id:hiroki_yamada:20180519154710p:plain *王騎将軍に"将軍"とは何かを教えられる信

しかし、ただ強い責任感を持っただけでは優れたマネージャーにはなれません。むしろ誤った考えで、チームを率いると逆効果になることも多々あります。そこで、マネージャーになったら最初に改めた方が良い考え方5つをまとめました。どれか一つでも該当してるなと思うものがあったら、一つであっても変えるべきだと思います。全てを揃えていないと、部下を死なす可能性が高まってしまうので。

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その1:自分が動くのではなく、チームを正しく動かすことがあなたの仕事

ここからはもう一度、将軍の例を使っていきます。まず、将軍になると兵を率いることになります。当たり前ですが、敵も大軍を率いてこちらを攻め込んでいるわけです。すると、自分一人が頑張っただけで勝てる状況ではありません。確かに、強い将軍は一人で100人ぐらい倒せるかもしれません。ただ、相手が1,000人いたら倒しきれません。だからこそ、強い将軍は原則自分で戦うことをしません。自軍を正しく動かすことに集中します。戦の状況を見極め、どこにどれだけの軍力を投入し、どのような作戦で戦うのか。ここに注力します。マネージャーも一緒です。よくマネージャー自身が一番頑張ってしまう姿をよく見ます。自分でやった方が早いから、自分でやった方が上手くできるから。ただ、あなたが一人でできることには限りがあるのです。そして、一人では成し遂げられないことだからチームを率いているのです。それを本当に理解しているのであれば、自分が一番動くのは"緊急事態"の時のみです。それ以外は、常に戦況を見極めることに注力すべきです。チームが"正しい"努力ができているかを見極めることに集中すべきです。これは優秀なプレーヤーであればあるほど、難しいことです。自分が戦ってないことに不安を覚えてしまうから。自分は仕事をしていないのではないかと思ってしまう。ただ、あなたの仕事は勝たせることであることを忘れないでください。勝てれば、あなたは戦う必要はないのです。一番恐れるべきは将軍であるあなたが間違うことであり、死ぬことです。それはチーム全体の死を意味します。それだけマネージャーというのは重要な役割を担っているのです。

その2:何をさせるか指示するではなく、何が成果かを定める

将軍は全ての人々にリアルタイムで正しい指示を出すことが物理的にできません。それは、いくらITが発達した現代であっても同じです。全ての情報を持てるわけではありません。指示をしてる暇がないこともあります。目の前に敵がいる時に、遠く離れている将軍にいちいちどうすれば良いのか確認することはできないのです。そんなことをしてる間に殺されます。だからこそ、指示を待ってしまう軍にしてはいけません。次にどうすれば良いか、将軍に聞けないと動けない軍にしてはいけません。そして、指示がないと動けない軍になるかは全て将軍に依存しています。将軍が指示を出し続けるのであれば、軍は指示を必要とするようになります。どんなに緊急事態であっても、将軍の指示を求めます。それが当たり前だからです。そうではなく、将軍はそれぞの戦う人たちにどんな成果を期待しているのか、ミッションはなんなのかを明確にするのです。そしてその成果を出せるのであれば、何をしても良いと理解させ、それぞれの判断に自信を持たせるのです。全員がそれぞれの敵と対峙した時に、どんな結果が好ましくて、そのための自分の判断が間違っていないという確信を持てる「指針」を持たせるのです。マネージャーは指示を出すことが仕事ではありません。なんでも好きにやって良いよと放置してもいけません。戦いに勝つために、何が成果で、何が評価され、それはどんな状態なのかを明確に示すのです。そして、それが明確に勝利のために必要であることを理解させ、それぞれがそのためにできることを考えられるように未来を見せ続けるのです。自分がいない戦場で、メンバーが自信を持って、確信を持って戦えるようにしてあげること。そして、それを全うすれば勝利を手にできるようにすることがマネージャーの仕事なのです。

その3:水準は周りに合わせるのではなく、あるべき水準を作る

世の中にはあらゆる水準があります。人間は平均を好み、他の水準に合わせたがる。戦わないのであれば、それで良いのかもしれません。しかし、平均に合わせてたら戦いには勝てません。勝つのはその水準を大きく超えたチームです。他軍が移動できる2倍の距離を移動できれば、機動力で勝ります。他軍の士気の2倍の士気があれば半分の兵力で勝てるかもしれません。そして、その水準を決めるのは将軍です。将軍がこれで良いと言えば、それが限界です。将軍がダメと言えば、もっと上の水準を目指します。水準は自分が作り上げていることを明確に意識した方が良いです。将軍以上の水準が勝手に出来上がることはありません。マネージャーも同様です。あなたが求めるスピード感がチームの水準となります。あなたが求めるクオリティがチームの水準となります。あなたが求める成果がチームの水準となります。他社がこうであるとか、他の人がこうであるとか、前はこうだったとか。そういう水準に合わせていたら、あなたのチームの水準は一向に上がりません。あなたのチームが強い理由が生まれません。歴史上、平均的なチームが偉大な戦果を挙げたことはないのです。

その4:メンバーに合わせるのではなく、自分に合わせる

性格的に優しい人がマネージャーになると、部下を思いやり、部下の意見をよく聞き、部下に合わせてしまう人がいます。でも、部下のためと思ってやっていることが、チームを死に追いやっている可能性があります。戦で「僕は死にたくありません」と言ってる兵隊を戦場に出すことをためらう将軍が勝利を収められるでしょうか?そんなことを全て聞いてたら、誰も戦場に行かなくなります。将軍の仕事は自軍を勝利に導くことであり、そのためにどんな時でもあなたに忠誠を誓い、あなたのために動いてもらう軍を作り上げることです。メンバーに合わせるのはやめた方がいいです。話を聞くなと言いたいわけではありません。自分の仕事を全うするためには、自分に合わせないといけない場面がたくさんあるということです。そして、だからこそついてくるメンバーを絶対に後悔させない。そういう覚悟が必要なのです。

その5:前に進めることは誰でもできるが、チームを立ち止まらせることができるのはあなたのみ

最後に自軍を滅ぼさないために一番大事なことです。それは軍を立ち止まらせることができるのは将軍のみであるということ。マネージャーになりたての場合、自分が引っ張らないとと過度に思い、どんどん前に進めてしまうことがあります。もちろん、それが正しい方向へ進んでいるのであればそれでいいのですが、誤った方向に進んでいることに気づかず、そして誰もがそれを言えずに行き着いた先は地獄であったということはよく起こります。前に進めることは誰にでもできます。兵隊であっても、敵陣に切り込むことはできるのです。そしたら一人が突っ込んだら、その他も動き出すでしょう。ただし、軍の動きを止めることができるのは、将軍のみです(厳密に言うとその場にいるリーダーのみ)。スタートアップは正解がない世界で戦っています。だからこそ、常に誤った方向に向かっている可能性があります。それでも、メンバーは前に進みます。なぜならそれがメンバーの役割だから。一旦動き出したらその流れに乗って進むことがメンバーに求められることです。仮にちょっと違うかもと思っていても、言いません。原則言わないし、言えない、言うという行動原理はそこにないと思った方がいいです(そんな状況でも言い出して勝利に導いた一兵卒はその後大将軍になるでしょう)。だからこそ、危ないと感じた瞬間に全体を立ち止まらせることができるのはマネージャーのみなんです。一度立ち止まることは想像以上に重要です。致命的な死を回避することができます。間違っていなかった場合でも、さらに自信を持って前に進むことができます。重要なのは自分しか立ち止まらせることはできないことを理解し、常にその必要性がないか自問自答することです。立ち止まれないチームはいつか死にます。チームを守るために、チームを立ち止まらせる勇気を持ちましょう。

f:id:hiroki_yamada:20180519154508j:plain *敵地で立ち止まり戦略を考え出す王翦将軍

結論:自分の好きな将軍を目指しましょう

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マネージャーってすごく分かりづらい存在です。マネージャー論は抽象的なものが多くて、イメージしづらかったり、スタートアップとは何か馴染みづらいものであったり。世の中に優れたマネージャーなんてほとんどいないですし。なので、初めてマネージャーになった人は悩みが尽きないと思います。そういう人にとっては、自分が好きな将軍を見つけるのがいいんじゃかなと思います。自分がなりたいと思える将軍が必ずいるはずです。何と言っても、人類とは戦争の歴史であり、数え切れないほどの優れた将軍が過去にいますので。漫画や映画の世界にまで広げたら、無限にいますね。その中で、この人自分に似てるなとか。この人めっちゃかっこいいとかそういう人を見つけたらいいんじゃないでしょうか。すごく参考になると思いますよ。そして日々、自分がその将軍になったつもりで、仕事してみてください。戦において負けは許されません。その感覚で仕事してたら、そのうちすごい成果が出てると思います。好きな将軍を見つけたらぜひ教えてくださいね。ちなみに僕はキングダム登場の「李牧」が好きです。