株式会社SCOUTERのCOOが人事を尽くして考えた

渋谷で「SCOUTER」を運営する株式会社SCOUTERのCOOがスタートアップ・組織について書いているブログです。

【徹底解説】COOが社長の忙しい5つの理由を説明します

はじめに

会社を立ち上げてから5年目となりました。社長と一緒に仕事をしていく中で、実はわからないことが一つだけありました。それは「なぜ、社長ってこんなに忙しいのだろう」ということです。逆に言えば、「なんで社長はこんなにも仕事を処理できないのだろう?」でした。そして、時にはその状況に対して怒りや憎しみが湧くこともありました。そんな中、社内の状況が変化し、会社のフェーズも変わりつつある中で、気づいたことがありました。

いつの間にか、昔社長がやってたような仕事を自分がやるようになっていたのです。ここ2.3ヶ月くらいは自分が昔の社長っぽい仕事をやるようになって、やっと謎が解けました。「なぜ、社長ってこんなに忙しいのだろう」に対する答えが見つかったのです。社長という人たちは当然自分が忙しい理由を自ら説明することもしないでしょうし、忙しいアピールもしたくないでしょう。なので、社長が何をやっているのか実はメンバーたちはわかっておらず、不信感とかを募らせることも多いかと思います。なので、COOが理解した社長の仕事や忙しい理由をまとめてみました。スタートアップで働いている方々はこれを読んで、不信感とかが多少和らげばいいなと思います。

社長が忙しい5つの理由

そもそも、社長というのはどういう仕事をするべきなのでしょうか。何のために存在すべきなのでしょうか。個人的な考えでは社長は「想定外の仕事を生み出すこと」が仕事だと思ってます。仕事というのは誰かが創り出すものです。メンバーの人達は誰かが生み出した仕事をしているのです。そして、その仕事を生み出すのが社長です(特にスタートアップでは)。新しい事業や新しいサービスを着想し、それを仕事としてメンバーに与えていく最初のきっかけを創ること。そして最も重要なことはそれが"想定外"であることです。既存の延長線上にある想定内の仕事はNo.2以下が作り出すことができます。社長が想定内の仕事ばかり作ってたら、会社の成長は止まります。そうではなく、既存の延長線上にはなかったメンバーからすると「何だそりゃ」と思うような仕事を持ってきたり、生み出したりする。これが社長の仕事です。なので、当然既存のオペレーションを回すこととか、タスクを処理することとかは社長にとってどうでもいいのです(どうでもいいというのは、ちゃんと回っていればどうでもいいって意味です)。それよりも、会社を未知の世界へと導くことが社長にしかできない仕事なのです。

その上で、社長が忙しい5つの理由が以下となります。

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その1:人と会うアポイントがえげつない

まず何と言っても社長はアポイントが多いです。そして量もさることながら、その質もすごいものがあります。これが「えげつない」と書いた理由なんですが、イメージでいうと皆様にも1年に一回くらい、すごい人とのアポイントがあって、とても緊張しながら会いに行くみたいなことがあると思います。そういうアポが社長には毎日入ってると思ってください。同世代のバチバチの起業家や、上場している企業の経営者、将来投資してくれるかもしれない投資家等、気を抜いたら殺されるようなアポイントの連続です。そして何と言っても社長は会社の顔です。社長がダメと思われたら会社全体がダメだと思われるので、常に気を張っていなければなりません。そういう人達とのアポイントをこなしながら、更に後輩起業家の相談に乗ったり、事業会社の人達から提携の話を相談されたりするわけです。そんなアポイントが一日に2つ、3つ入るのが当たり前。夜のアポイントが終わるのは夜の12時を回ることもザラです。僕も先週の一週間、毎日夜にアポイントが入りましたが、恐ろしいほど大変でした。これをずっと繰り返しているのかと思うと社長を心の底から尊敬するようになります。

じゃあ、アポイント減らせばいいじゃないかと思う方もいるかもしれません。しかし、それは違います。新しい仕事は必ず人と人の間に生まれます。いつ、どんな会話がきっかけで新しい仕事が生まれるのか、新しいチャンスが生まれるのかはわからないのです。もしかしたら事業の提携の話が始まるかもしれない、もしかしたら出資の話が始まるかもしれない、後輩起業家の相談だって将来何かに繋がる可能性は十分にあるのです。そのため、今時点でどんな意味があるかはわからなくても、社長だけは会い続けなければいけないのです。社長は未来の、想定外の仕事を生み出すのが仕事なので。

その2:一日中連絡が来る

人と会うことが増えると何が起きるのかというと、一日中誰かから連絡が来るようになります。一度このモードに入ると一定のところまではどんどん連絡が増えていきます。これ想像以上に体力と気力を使います。もちろん社長は会社の顔ですので即レスをします。全ての連絡に即レスをするともちろん会話が途切れません。気づいたら、全ての連絡が終わるのに二時間かかってたなんてこともよくあります。これは僕自身も体験して驚きました。たかがチャットなんですが、相手は社内の人ではないので気も使いますし、目上の人も多い。そういう連絡が延々と続くのです。社長は大概ずっとスマホ見てると思いますが、だいたい誰かに返信をしております。社長というのは、それほど社外の人間と繋がり、日々コミュニケーションを取り、新たなきっかけを模索しているのです。

その3:twitterをめちゃめちゃ見てる

最近のスタートアップの社長はほとんどがtwitterをやってると思います。僕も数ヶ月前からtwitterをちゃんとやり始めましたが、これで時間の使い方がかなり変化しました。なんでtwitterなの?そんなくだらないことするなよって思う方もいるかもしれません。しかし、twitterはスタートアップにとって宝の山です。スタートアップ経営に役立つ情報というのは世の中的にはマイノリティです。なかなか情報収集は難しい中で、twitterであれば適切な人をフォローしていくことで自然と適切な情報収集ができるようになっていきます。社長にとって情報収集というのは人と会うことの次に重要な活動と言っても過言ではありません。手に入れた情報の中でしかアイディアは生み出せないので。また、twitterでの発信は会社の知名度向上にも繋がりますし、採用にも繋がります。なのでスタートアップ社長にとってtwitterを触ってる時間というのは非常に重要な仕事の時間なのです。決して暇つぶしにやってるわけではありません。社長がtwitter見てたら、おっ社長ちゃんと仕事してるじゃんって思ってあげてください。

その4:一発勝負の仕事が多いため実はめちゃめちゃ準備してる

社長の仕事の中にはメディア出演とかイベント登壇、ブログでの情報発信、ピットバトルへの出場等があります。これらの仕事の特徴に「一つの仕事のインパクトがとてつもなく多い」にも関わらず「一発勝負で失敗が許されない」というものがあります。最近のスタートアップはリーンで学習しながらやりましょうが基本スタンスなので、まずやって失敗から学ぶが基本です。しかし、社長の仕事だけは失敗したら痛手が大きすぎたり、チャンスを失う仕事が多いです。ここは仕事のスタンスとしてリーンが流行ったからこそ生まれた解離だと思います。そのため、このような仕事をこなすために社長は実は多大な準備をしています。でも当然これらの準備って社員の前でやることは少ないですし、頭の中で考える準備が多いのでなかなかメンバーに伝わりません。僕自身も最近イベントへの登壇とかの機会をいただくようになりましたが、正直そのイベントが入ってる日は他の仕事なんて手につきませんでした。イベントで何を言うべきか、会社に対してどういう印象を持ってもらうべきか、他の人たちはどんなことを言うのだろうと延々と頭の中で考えて、気づいたら時間になっている。それくらい、インパクトが大きい仕事をしているので、そこへの集中が求められますし、他のことをこなす余裕はないのです。それは今まで「なんでこなせないんだよ」って思ってた自分もこなせなかったんで、どんな人でもその立場になったらこなせなくなるというか、そこまでの仕事をこれまでの自分はしてなかったんだなと思い知らされるだけでした。

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その5:考え始めたら2~3時間経ってることもざら

社長が考える論点は難解なイシューばかりです。会社の成長率をもっと高めるためには、次の事業はどの領域に進むべきか、資金調達はどのタイミングでどれくらいするべきか、どのような人を採用したら会社が成長するか。たった数分で答えが出るものなんてものはほとんどなく(意思決定"するだけ"なら数分でもできますが)、また合理的な思考だけでは答えが出せないイシューも非常に多いです。そのため、これらのイシューについて考え始めたら2~3時間なんてあっという間です。このような論点は社内でも相談できる人は多くないです。なので、外部の人にアドバイスをもらいながら、社内のメンバー様子を見ながら、一人で考えなければ時間が多いのです。それは僕らには「見えない」時間であり、「手を出せない」時間なのです。ただ一つ言えるのは、社長がこういう論点にゆっくりと向き合う時間を取れなくなった時は、会社の将来が非常に危ぶまれているということです。社長が集中してこれらのことについて考え、その時に答えが出なかろうが自分の身体の中に論点を刻み込みあらゆるパターンを自分の頭の中で駆け巡らせ、決めなければならない時が来た時に即断即決で決められるように頭と心を整理することは会社の未来にとって必ず必要な時間なのです。

結論:社長を支えてあげてください

社長が忙しい理由、そして社長が細かい仕事を処理できない理由を5つの視点で見て来ました。社長の一日というのは複数のアポイントと一日中鳴るチャットとtwitterと、一発勝負への準備と未来への思考で終わります。むしろ時間は圧倒的に足りないんです。この一日の中でちょろっと言われたタスクなんて覚えていません。だから忘れます。それは社長の能力とか性格じゃないです。社長の仕事をしてると忘れるくらい他のことに集中しないといけないんです。だから、タスクを期限通りにやらないことを怒らないでください。自分のことを棚に上げてなぜタスクを期限通りにできないんだと怒られても、社長のことを憎まないでください。社長に頼み事をする時は、期限を3日前に設定してください。そして、最初の期限の日にチャットでリマインド、次の日にチャットでリマインド、本当の期限の前日に口頭でリマインドしてあげてください。そしたら、ちゃんと期限通りにやってくれます。

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社長は確かに多くのタスクを抱えているわけではありません。もしかしたら、何をやっているのかわからず、暇そうに見えるかもしれません。でも、会社には社長にしかできない仕事がたくさんあるのです。そして、それは会社の"現在"ではなく"未来"のための活動です。明らかに誰よりも社長という仕事は忙しくなります。365日24時間、社長は会社と向き合い続ける必要があります。だから、皆様が社長を支えてあげてください。社長じゃなくてもできる仕事は巻き取ってあげてください。社長が余計な心配をしないように会社の"現在"を確固たるものにしてください。それができる人は優秀で、信頼される人になります。そして、それは社長の様子をあなたが"どう捉えるか"にかかっているのです。